相続の手段としての生前贈与 本記事は、生前贈与と贈与税がどのように相続と相続税に関係するのか説明する記事です。本記事は、令和6年12月の時点における国税庁ホームページの記載に基づいています。贈与税の基礎贈与税がかかる贈与財産 個人から贈られた財産には贈与税がかかり、法人から贈られた財産には所得税がかかります。 1月1日から12月31日までの間に受けた贈与についての贈与税の申告と納税は、財産をもらった人(受贈)が翌年の2月1日から3月15日までに行います。 贈与税の課税方式には暦年課税と相続時精算課税の二方式があります。暦年課税 暦年課税制度は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額を基に贈与税額を計算する課税制度です。その年の贈与の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残額について贈与税額を計算します。 贈与税額の税率は、贈与財産の価額及び贈与者と受贈者との間の関係性に応じて以下のように変化します。一般贈与財産用の贈与税の速算表基礎控除後の課税価格200万円以下300万円以下400万円以下600万円以下1,000万円以下1,500万円以下3,000万円以下3,000万円超一般税率10%15%20%30%40%45%50%55%控除額-10万円25万円65万円125万円175万円250万円400万円一般贈与財産用の贈与税の速算表が適用される贈与贈与者受贈者あらゆる属性の贈与者18歳未満の者直系尊属以外の贈与者18歳以上の者特例贈与財産用の贈与税の速算表基礎控除後の課税価格200万円以下400万円以下600万円以下1,000万円以下1,500万円以下3,000万円以下4,500万円以下4,500万円超特例税率10%15%20%30%40%45%50%55%控除額-10万円30万円90万円190万円265万円415万円640万円特例贈与財産用の贈与税の速算表が適用される贈与贈与者受贈者直系尊属である贈与者18歳以上の者※特例贈与財産に関する税率及び控除額の適用を受ける場合、受贈者が贈与者の直系卑属であることを証明する書類(例えば、戸籍謄本)を贈与税の申告書に添付して提出します。計算例1贈与により一般贈与財産A万円を取得した場合(贈与税額) = (A万円 - 110万円) × 一般税率B - 控除額C計算例2贈与により特例贈与財産A万円を取得した場合(贈与税額) = (A万円 - 110万円) × 特例税率b - 控除額c計算例3贈与により一般贈与財産D万円と特例贈与財産d万円の両方(合計A万円)を取得した場合一般贈与財産に対応する税額:{(A万円 - 110万円) × 一般税率B - 控除額C} × D万円 / A万円特例贈与財産に対応する税額:{(A万円 - 110万円) × 特例税率b - 控除額c} × d万円 / A万円相続時精算課税 相続時積算課税制度は、相続時積算課税を選択したうえで贈与を受けるたびにこの制度に係る贈与税を納付し、その贈与をした者が亡くなって相続が発生したときに当該贈与税額を相続税額から控除する制度です。贈与税額の計算相続時精算課税を選択した特定の贈与者が1年間でA万円の贈与をした場合(令和6年1月1日より)(課税価額) = (A万円 - 110万円) - 2,500万円(贈与税額) = (課税価額) × 税率20% 贈与者は、一年間の贈与でこの2,500万円の枠を使い切らなくてもよく、上の計算式で計算した課税価額がマイナスであれば、別の年の贈与について持ち越すことができます。複数年にわたり相続時精算課税に係る贈与を行う場合は、贈与の度に申告が必要です。 なお、相続時精算課税の選択は、贈与者ごとの選択になります。相続時精算課税制度を利用するうえでの注意点は、相続時精算課税を選択すると、その選択に係る贈与者からの贈与は全て相続時精算課税の対象となり、暦年課税の対象に変更できないことです。 相続時の「課税遺産総額」を求めるために相続時精算課税の適用を受けた財産の価額(贈与時の時価)を相続発生時の被相続人の財産に加算しますが、この「相続時精算課税の適用を受けた財産の価額」とは年間110万円の基礎控除額を差し引いた残額に当たります。贈与者と受贈者の要件贈与者は、贈与をした年の1月1日の時点において60歳以上である受贈者は、贈与者の推定相続人である直系卑属(子や孫)であり、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上である※相続時精算課税の適用を受ける場合、受贈者が贈与者の直系卑属であることを証明する書類(例えば、戸籍謄本)を相続時精算課税選択届出書及び贈与税の申告書に添付して提出します。相続時精算課税の特例 受贈者が、令和8年12月31日までに父母や祖父母などの贈与者から自己の居住用の住宅の取得や増改築のための資金を取得したとき、贈与者の年齢がその年の1月1日において60歳未満であっても一定の要件のもとに相続時精算課税の適用を受けることができます。 受贈者が贈与者の直系卑属である推定相続人又は孫であること、贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること等の要件が存在します。贈与税の非課税措置 将来世代への財産の有意義な贈与には非課税措置が用意されています。ここからはそのような贈与を紹介します。住宅取得等資金の贈与受贈者が贈与者の直系卑属の場合 令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に父母や祖父母など直系尊属から住宅用家屋の新築若しくは取得又は増改築等のための資金(「住宅取得等資金」)の贈与を受けた場合において、一定の要件のもと、受贈者ごとに非課税限度額まで贈与税が非課税になります。非課税限度額 省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、その他の住宅の場合には500万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税になります。受贈者の要件受贈者は、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上である。受贈者は、贈与を受けたときに贈与者の直系卑属である。贈与を受けた年において受贈者の合計所得金額は1,000万円以下又は2,000万円以下である。受贈者は、贈与を受けた年の翌年3月15日までに当該贈与に係る住宅取得等資金の全額を自己の住宅用家屋の新築若しくは取得の対価又は増改築等の費用に充てる。受贈者は、贈与を受けた年の翌年3月15日までに当該住宅用家屋に居住しているか、又は同日以後遅滞なく居住することが確実である。平成21年から令和5年までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の適用を受けたことがない。住宅の要件 本非課税制度が適用される住居用家屋は、受贈者の所得金額が1,000万円以下の場合では床面積が40m2以上50m2未満の家屋、受贈者の所得金額が2,000万円以下の場合では床面積が40m2以上240m2未満の家屋である。特例の対象となる贈与の要件 本制度の対象となる贈与は以下のいずれかの要件を満たします。 住宅の新築の対価に充てるための贈与である。 建売住宅又は昭和57年1月1日以後に建築された中古住宅若しくは地震に対する安全性に係る基準に適合する中古住宅の取得に充てるための贈与である。 居住の用に供している住宅の増改築等の費用(100万円以上)に充てるための贈与である。受贈者が贈与者の配偶者の場合 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、その贈与された財産の価額から基礎控除額110万円に加えて最高2,000万円までを控除することができます。適用要件婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与である。居住用不動産の贈与又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与である。贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住の要に供し、かつ、その後も引き続き居住の用に供する見込みである。過去に同一配偶者からこの配偶者控除の特例の適用を受けていない。教育用資金の贈与 受贈者が、平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間に父母や祖父母など直系尊属から、金融機関との一定の契約に基づいて教育資金に充てるための金銭等の贈与を受けた場合、受贈者1人につき1,500万円までの金額に相当する部分について贈与税が非課税になります。利用方式 贈与者は、金融機関と教育資金管理契約を締結することで受贈者に対する教育用資金の贈与を行います。金融機関と教育資金管理契約には教育資金贈与非課税口の開設や教育資金贈与信託の契約が挙げられます。贈与者は複数であっても構いません。 教育資金は、保育園から大学院までの学校等及び学校以外のスポーツや文化芸術に関する教室への支払いに充てることができるほか、通学定期券や留学への支払いに充てることもできます。 贈与された教育資金は、受贈者が教育機関等への支払いを証明する領収書等を上記金融機関の営業所に提出することで受贈者に払い戻されます。受贈者の要件受贈者は、教育資金管理契約を締結する日において30歳未満である。受贈者は、贈与者の直系卑属である。信託受益権又は金銭等を取得した日が属する年の前年分の受贈者の合計所得金額は1,000万円以下である。教育資金口座に係る契約の終了 教育資金口座に係る契約は、原則として以下のいずれかの事由が発生した場合に終了します。 受贈者が30歳に達した(その時点において学校等に在学中又は教育訓練受講中であることを上記金融機関の営業所に届け出た場合を除きます)。 受贈者が40歳に達した(学校在学中又は教育訓練受講中でも契約終了)。 口座の残高がゼロになり、その口座に係る契約を終了させる合意があった。 受贈者が死亡した。 1~3の事由で契約が終了した後に贈与財産が残っていた場合、その財産は契約終了年の贈与税課税の対象になります。契約期間中に贈与者が死亡した場合 契約期間中に贈与者が死亡した場合において、以下の1又は2の場合に該当するときは、上記金融機関の営業所に贈与者の死亡を届け出ます。 令和3年4月1日以後にその贈与者から信託受益権又は金銭等の取得をし、この非課税制度の適用を受けた場合 平成31年4月1日から令和3年3月31日までの間にその贈与者から信託受益権又は金銭等の取得(その死亡前3年以内の取得に限る)をし、この非課税制度の適用を受けた場合 この場合、管理されていた残額は、相続等により受贈者によって取得されたものとみなされます。 ただし、贈与者の死亡日において受贈者が23歳未満であるとき、学校等に在学中であるとき、又は教育訓練の受講中である場合では、相続等により取得されたものとはみなされません。 令和3年4月1日以後に取得した信託受益権又は金銭等であって、相続等により取得したとみなされる管理残額について、その受贈者が贈与者の子以外(孫など)である場合、その贈与者の管理残額に対する相続税額は、相続税額の2割加算の対象になります。結婚・子育て資金の贈与 受贈者が、平成27年4月1日から令和7年3月31日までの間に父母や祖父母など直系尊属から、金融機関との一定の契約に基づいて結婚・子育て資金に充てるための金銭等の贈与を受けた場合、受贈者1人につき1,000万円までの金額に相当する部分について贈与税が非課税になります。利用方式 贈与者は、金融機関と結婚・子育て資金管理契約を締結することで受贈者に対する教育用資金の贈与を行います。金融機関と結婚・子育て資金管理契約には結婚・子育て資金贈与非課税口の開設や結婚・子育て資金贈与信託の契約が挙げられます。贈与者は複数であっても構いません。 結婚・子育て資金は、結婚及びそれに伴う新生活並びに子育てに関する支払いに充てることができるほか、出産及び不妊治療に関する支払いに充てることもできます。 贈与された結婚・子育て資金は、受贈者が結婚・新生活、不妊治療、出産及び子育てに関する支払いを証明する領収書等を上記金融機関の営業所に提出することで受贈者に払い戻されます。ただし、結婚関係の支払い額の限度は300万円です。受贈者の要件受贈者は、結婚・子育て資金管理契約を締結する日において18歳以上50歳未満である。受贈者は、贈与者の直系卑属である。信託受益権又は金銭等を取得した日が属する年の前年分の受贈者の合計所得金額は1,000万円以下である。結婚・子育て資金口座に係る契約の終了 結婚・子育て資金口座に係る契約は、原則として以下のいずれかの事由が発生した場合に終了します。 受贈者が50歳に達した。 口座の残高がゼロになり、その口座に係る契約を終了させる合意があった。 受贈者が死亡した。 1又は2の事由で契約が終了した後に贈与財産が残っていた場合、その財産は契約終了年の贈与税課税の対象になります。契約期間中に贈与者が死亡した場合 契約期間中に贈与者が死亡した場合、上記金融機関の営業所に贈与者の死亡を届け出ます。この場合、管理されていた残額は、相続等により受贈者によって取得されたものとみなされます。 令和3年4月1日以後に取得した信託受益権又は金銭等であって、相続等により取得したとみなされる管理残額について、その受贈者が贈与者の子以外(孫など)である場合、その贈与者の管理残額に対する相続税額は、相続税額の2割加算の対象になります。まとめ 贈与をすると、贈与財産の価額から基礎控除110万円を差し引いた残額について贈与税が課される(暦年課税)。 相続開始前7年間に発生した贈与で被相続人から相続人が取得した財産は、相続税額を計算するために相続財産に加算される。 相続時精算課税を選択すると、基礎控除110万円を差し引いた残額についてさらに特別控除額2,500万円を差し引き、その残額について贈与税が課される。 直系尊属が18歳以上の直系卑属に住宅取得等資金を贈与するとき、その住宅の性格に応じて500万円又は1000万円に相当する部分について贈与税が非課税になる。 直系尊属が30歳未満の直系卑属に教育資金を贈与するとき、1,500万円までの金額に相当する部分について贈与税が非課税になる。 直系尊属が18歳以上50歳未満の直系卑属に結婚・子育て資金を贈与するとき、1,000万円までの金額に相当する部分について贈与税が非課税になる。 婚姻関係が20年以上継続している夫婦間で居住用不動産又は居住用不動産取得用の金銭が贈与された場合、2,110万円までの金額に相当する部分について贈与税が非課税になる。 配偶者には相続税の軽減制度に加え、贈与税についても控除制度が用意してあることがわかります。 これらの制度を利用すると支払う税の額を抑えることができますが、多くの財産を渡した配偶者が亡くなると、子が二次相続で支払う相続税が増えることになります。一次相続において遺産の分配を考えるときは、二次相続を考慮して生前贈与や遺産分割を計画することが重要です。 正確に相続税や贈与税を計算したい方は、税理士に計算を依頼してください。





