介護保険の紹介


 介護保険法は、高齢者の介護を社会全体で支えあう介護保険制度を確立するため、平成9年(1997年)に公布され、平成12年(2000年)に施行されました。その後、介護保険法は数度の改正を経て2024年の時点では以下のような制度になっています。

介護保険制度の目的と仕組み

目的: 介護保険は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により介護を要する状態になった人の日常生活に必要な保険・福祉サービスを提供することだけでなく、その要介護者の能力に応じた自立を支援することを目的としています。

 

被保険者: 介護保険は、被保険者が介護保険料を支払うことで介護給付を受け取れる社会保険方式になっており、現行の介護保険制度では40歳以上の人が第1号又は第2号の被保険者になります。

  • 第1号被保険者:65歳以上の住民であり、原因を問わず要介護(要支援)認定を受けられる。
  • 第2号被保険者:40歳以上64歳以下の医療保険加入者であり、加齢に伴う特定の疾病を原因として要介護(要支援)認定を受けられる。

保険者と財源: 介護保険の保険者は市町村と特別区です。介護保険の財源の50%が税金であり、残りの50%が被保険者から徴収した介護保険料です。税金の内訳は、国税が25%、都道府県税が12.5%、市町村税が12.5%です。介護保険料の内訳は、22%が第1号保険者の保険料、28%が第2号保険者の保険料です。

介護保険サービス

 介護保険サービスを利用しようとする者は、まず市区町村の公的介護保険の窓口(地域包括支援センター等)に申請し、支援・介護を必要とする状態であることを認定してもらったうえでその状態の程度に応じてサービスを受けることができます。

 

 介護保険サービスは予防給付サービスと介護給付サービスに分かれ、要支援認定を受けた人は予防給付サービスを、要介護認定を受けた人は介護給付サービスを受けることができます。

介護保険サービスの種類

予防給付サービス

  • 介護予防サービス
  • 地域密着型介護予防サービス
  • 介護予防支援(介護予防プランの作成)

介護給付サービス

  • 居宅サービス
  • 地域密着型サービス
  • 施設サービス
  • 居宅介護支援(介護プランの作成)

 地域密着型(介護予防)サービスの利用者は、そのサービスを提供する事業者が所在する市区町村に居住する要介護者に限定されます。そのため、地域密着型サービスを提供する施設の定員等の詳細は、サービスを提供する市区町村によって異なります。

予防給付サービスの紹介

介護予防通所リハビリテーション

対象:要支援者
内容:介護老人保健施設や医療機関における介護予防を目的とする日帰り機能訓練

 

 以下の介護給付サービスのうち、要支援者も受給可能なサービスは予防給付サービスに分類されます。

介護給付サービスの紹介

居宅を中心に利用するサービス

訪問介護

対象:要介護者
内容:ホームヘルパーによる身体介護と生活援助

訪問入浴介護

対象:要支援者・要介護者
内容:入浴の介助

訪問看護

対象:要支援者・要介護者
内容:看護師等による療養上の世話と診療の補助

訪問リハビリテーション

対象:要支援者・要介護者
内容:理学療法士等によるリハビリ

居宅療養管理指導

対象:要支援者・要介護者
内容:医師、歯科医師、薬剤師等による療養上の管理・指導

通所介護(デイサービス)

対象:要介護者(要支援者も条件付きで可)
内容:通所介護施設における食事・入浴支援と機能訓練等

通所リハビリテーション(デイケア)

対象:要介護者
内容:介護老人保健施設や医療機関における日帰り機能訓練

短期入所生活介護(ショートステイ)

対象:要支援者・要介護者
内容:介護福祉施設(特養)等に短期入所したうえでの食事・入浴等の支援と機能訓練等

短期入所療養介護(療養型ショートステイ)

対象:要支援者・要介護者
内容:介護老人保健施設(老健)等に短期入所したうえでの医療的ケア、介護、機能訓練等

特定施設入居者生活介護

対象:有料老人ホーム等に入居する要支援者・要介護者
内容:食事・入浴支援と機能訓練等

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

対象:要介護者
内容:定期巡回と随時対応による訪問介護または訪問看護

夜間対応型訪問介護

対象:要介護者
内容:夜間専用の訪問介護

地域密着型通所介護

対象:要介護者(要支援者も条件付きで可)
内容:定員18名以下の通所介護施設における食事・入浴等の支援と機能訓練等

認知症対応型通所介護

対象:認知症の要支援者・要介護者
内容:食事・入浴等の支援と専門的ケア

小規模多機能型居宅介護

対象:要支援者・要介護者
内容:通所を中心として訪問と入所を組み合わせたサービス

認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)

対象:認知症の要支援者・要介護者
内容:共同生活している認知症患者への食事・入浴等の支援と機能訓練等

看護小規模多機能型居宅介護

対象:要介護者
内容:小規模多機能型居宅介護と訪問看護を組み合わせたサービス

地域密着型特定施設入居者生活介護

対象:有料老人ホーム等に入居する要介護者
内容:定員29名以下の施設における食事・入浴等の支援と機能訓練等

介護保険施設で受けるサービス

介護福祉施設サービス

対象:自宅では介護が困難な常に介護が必要な要介護者
内容:特別養護老人ホーム(特養)における介護

地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

対象:特別養護老人ホームに入居する要介護者
内容:定員29名以下の施設における食事・入浴等の支援と機能訓練等

介護保健施設サービス

対象:病状が安定し、リハビリに重点をおいた介護が必要な要介護者
内容:介護老人保健施設(老健)における介護、看護とリハビリ

介護医療院サービス・介護療養施設サービス

対象:長期にわたり療養が必要な要介護者
内容:介護医療院・介護療養施設における医療と介護

その他の介護保険サービス

福祉用具貸与

対象:要支援者・要介護者
内容:福祉用具のレンタル

特定福祉用具販売

対象:要支援者・要介護者
内容:特定の個人用福祉用具の購入補助

居宅介護住宅改修

対象:要支援者・要介護者
内容:要介護者の生活環境整備のために住所地の住宅改修に補助金が支払われます。改修内容としては、手すりの取り付け、段差の解消、滑り防止及び移動の円滑化等のための床材の変更、引き戸等への取り換え、洋式便器への変更等が挙げられます。

介護保険サービスの利用法

 上述したように、介護保険を利用しようとする者は、市区町村の公的介護保険の窓口に申請し、要介護度について審査を受けます。審査は、調査員による本人への聞き取り調査と主治医の意見書を勘案して行われます。要介護認定されると介護支援専門員(ケアマネージャー)がそれぞれの人に合ったケアプランを作成し、認定者はそのケアプランに応じたサービスを受けることができます。

 

 独りで日常生活の基本的な行為(食事、排泄、入浴など)を行えるか否かが要支援認定と要介護認定とを分ける基準であるとされています。要支援はさらに2段階、要支援はさらに5段階の等級に分かれます。等級は動作能力のレベルで決まります。

 

 要支援・要介護認定者は、支給限度額までは1割の自己負担で上記のサービスを受けることができます。

公的介護保険の支給限度額と自己負担額(2024年現在)
区分 支給限度額(月額) 自己負担額(1割の場合)
要支援1 50,320円 5,032円
要支援2 105,310円 10,531円
要介護1 167,650円 16,765円
要介護2 197,050円 19,705円
要介護3 270,480円 27,048円
要介護4 309,380円 30,938円
要介護5 362,170円 36,217円

 一か月に支払った自己負担額が一定の額を超えたときに高額介護サービス費を支給する自治体もあります。