高齢者の皆さんの中にはペットを飼っているけれども、又は飼いたいけれども、自分たちが死んだ後に遺されたペットが世話をしてもらえるか心配な方、又は心配でペットを飼うことに躊躇している方もいらっしゃるでしょう。この記事は、飼い主が亡くなった後にお金をペットに遺す方法について説明します。
飼主が亡くなってしまった後にそのペットの世話をするためには、そのペットの世話を引き受けてくれる人を確保しなくてはなりません。アメリカではペットが飼い主の遺言でその遺産を受け取れるそうですが、日本ではペットは遺産を受け取ることができません。そこで、ペットの世話をしてくれる人(以後、「世話人」と呼びます)がペットを世話するための経費に充ててもらうため、飼い主は飼い主の死後に世話人にお金を支払う仕組みを作っておかなくてはなりません。その仕組みには「負担付き遺贈」又は「負担付き死因贈与」という制度を利用することができます。
負担付き遺贈を利用する場合では、遺されるペットが死ぬまで又は遺されるペットに新しい飼い主が見つかるまでのそのペットの世話を条件として、ペットの飼育にかかる年間の費用と遺されるペットの推定余命又は新しい飼い主が見つかるまでの期間から計算される額の金銭を世話人予定者に遺贈する旨を遺言の中に加えます。
負担付き遺贈には、遺言書の作成時にペットの世話とその対価としての遺贈に関する条項を加えるだけで済むという、他の方式と比較して手軽に行えるという遺贈者側のメリットがあります。しかしながら、遺贈は贈る側と贈られる側の双方の合意によって成立するのではなく、贈る側の意思のみで成立するため、贈られる側が遺贈の申出を拒否することもあり得ます。その場合には遺されるペットは、世話人不在の状態になってしまします。
負担付き死因贈与は、負担付き遺贈と異なり、飼主が元気なうちに世話人となる人との間で契約して成立します。契約書には飼い主(贈与者)は自身の死亡後に世話人予定者に金銭等を贈与すること、及び世話人予定者(受贈者)は贈与者の死後に贈与者のペットの世話を行うこと等の贈与者と受贈者の権利と義務の内容を記載します。この契約書を公正証書にすることもできます。契約書の中に提示する世話人に支払われる金銭の額は、遺贈の場合と同じです。
負担付き死因贈与には、贈与者と受贈者の双方の合意によって契約が成立するため受贈者が贈与者の死後に契約を解除して合意事項を履行しないことが難しいという贈与者側のメリットがあります。死因贈与契約書を公正証書にすることで合意履行の確実性をさらに高めることができるというメリットもあります。しかしながら、遺言書も作成する場合、遺言書と死因贈与契約書の2通の書類を作成しなくてはならないという点でデメリットもあります。
遺贈も死因贈与も相続に関係があります。遺贈及び死因贈与で贈られた金銭は相続税の課税対象になります。また、世話人に贈られる金銭の額が他の相続人の遺留分を侵害しないように注意する必要があります。
次に紹介する方法は「信託」といい、「委託者」、「受託者」、及び「受益者」という三者を必要とする契約に基づく制度です。信託契約によりペットに遺産を遺す方法は、財産はあるけれども家族がいない独身者に適している方法です。しかしながら、負担付き遺贈や負担付き死因贈与と比較して高額の費用が信託契約の準備に必要になります。信託契約によりペットの世話人にお金を支払う方法について詳しく知りたい方は、リンク先の記事をご覧ください。信託の仕組みを知りたい方は、当サイト内のこちらの記事をご覧ください。
遺贈、死因贈与、及び信託にはそれぞれ特性があります。それらの特性を十分に考慮してこれらの制度を使ったらよいと思います。ペットの将来について心配な方は、
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