東京城北生活安心情報室

検索結果

「 相続 」の検索結果
  • 相続人の範囲
    相続人の範囲と相続分相続発生後の手続き 人が死亡したときは、同居の親族等が死亡の事実を知った日から7日以内に死亡者の死亡地、本籍地、又は届出人の所在地の市役所、区役所、又は町村役場に死亡届を提出することで死亡の事実がその死亡者の戸籍に反映され、同時に相続が始まります。諸手続とその期限相続承認・放棄の決定:3か月後まで所得税の申告・納付:4か月後までに死亡者の死亡日が含まれる年の1月1日から死亡日までの所得金額を税務署に申告して所得税を納付(準確定申告)相続税の申告・納付:10か月後までに相続財産の価額を税務署に申告して相続税を納付相続登記:3年後までに相続した不動産について登記相続人の範囲と法定相続分 亡くなった方を「被相続人」といい、被相続人の遺産(プラスの遺産もマイナスの遺産も含みます)を受け継ぐ人を「相続人」といいます。相続人は大きく配偶者とそれ以外に分けることができ、配偶者以外の相続人は以下のように分類されます。第1順位:子第2順位:「被相続人」の直系尊属第3順位:「被相続人」の兄弟姉妹 故人の遺産を分割するときの割合が各相続人について民法で決まっており、これを法定相続分といいます。遺産を法定相続分どおりに分割しなくても構いませんが、法定相続分が遺産分割の基準として定められています。 具体例をもって法定相続分を説明します。1.「被相続人」の配偶者が存命であり、子がいる場合配偶者の相続分は相続財産の1/2、子の相続分は1/2であり、子が複数人ある場合では各自の相続分は等しい。子には前の配偶者との間の子、「被相続人」が男親の場合では認知した非嫡出子も含まれ、嫡出子と非嫡出子との間では相続分に差はない。配偶者の連れ子には相続権が無いが、養子縁組をすることで配偶者の連れ子に相続権を与えることができる。2.「被相続人」の配偶者が故人であり、子がいる場合子が全ての遺産を相続し、子が複数人ある場合では各自の相続分は等しい。子の範囲は(1)の場合と同じである。3.「被相続人」の配偶者が存命であり、子がなく、「被相続人」の直系尊属(「被相続人」の親、祖父母等)が存命の場合配偶者の相続分は相続財産の2/3、直系尊属の相続分は1/3である。「被相続人」の親と祖父母が存命の場合、相続人となるのは親のみである。「被相続人」の両親が存命の場合、各自の相続分は等しい。4.「被相続人」に配偶者がなく、子もいないが、「被相続人」の直系尊属が存命の場合直系尊属が全ての遺産を相続する。「被相続人」の親と祖父母が存命の場合、相続人となるのは親のみである。「被相続人」の両親が存命の場合、各自の相続分は等しい。5.「被相続人」の配偶者が存命であり、子がなく、直系尊属もないが、「被相続人」の兄弟姉妹が存命の場合配偶者の相続分は相続財産の3/4、兄弟姉妹の相続分は1/4である。兄弟姉妹が複数人あるとき、各自の相続分は等しい。6.「被相続人」に配偶者がなく、子も直系尊属もないが、「被相続人」の兄弟姉妹が存命の場合相続人となるのは「被相続人」の兄弟姉妹のみである。兄弟姉妹が複数人あるとき、各自の相続分は等しい。半血の兄弟姉妹(父又は母の一方が異なる兄弟姉妹)がいる場合、半血の兄弟姉妹は、「被相続人」と父母を同じくする兄弟姉妹の半分の相続分を有する。孫やひ孫が相続人になる代襲相続 下の図(i)及び(ii)のように、前号の記事に挙げた第1順位・第3順位グループの者が相続開始までに死亡した場合、又は欠格若しくは廃除となった場合、その子が親に代わって相続権を得て相続をします。これを代襲相続といいます(直系では被相続人のひ孫まで、傍系では被相続人の甥姪まで代襲相続することができます)。例外:親が家庭裁判所に相続放棄を申し出てそれが認められた場合には、その者には初めから相続権がなかったものとして扱われるため、相続放棄をした親の子や孫に代襲相続は認められません。養子と養親及び実親との関係 養子には普通養子縁組制度と特別養子縁組制度があります。これらの二制度には相続に関して違いがあります。普通養子縁組の養子は、両方の親の相続権も有する。特別養子縁組の養子は、養子縁組時に実親との親子関係が戸籍上では終了しているため、養親の相続権のみを有する。相続権の喪失 一定の事由がある場合、相続人から相続権がはく奪されます。これには欠格と廃除の2つの制度があります。欠格 相続人は、下記のように、相続を自分に有利になるように不正な手段を用いたことが原因で欠格になります。 故意に被相続人又は先順位若しくは同順位の相続人を死亡させた、又は死亡させようとしたために刑に処せられた。 被相続人が殺害されたことを知って、これを告発・告訴しなかった。 詐欺・強迫によって、相続に関する被相続人の遺言の作成、撤回、取消し、変更を妨げた。 詐欺・強迫によって、被相続人に相続に関する遺言の作成、撤回、取消し、変更をさせた。 相続に関する被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した。 相続開始後に欠格事由が判明した場合、相続開始時に遡って相続権がないものとして扱われます。欠格者は遺贈を受けることもできません。 遺言書の隠匿について、相続人が自分に有利な遺言書を隠匿した場合、その相続人は欠格者には当たらないという判例があります(最判H9.1.28)。廃除 被相続人が相続させたくないと思うほどの非行を行った者があった場合、被相続人の意思に基づいて、家庭裁判所の審判又は調停によってその者から相続権をはく奪することができます。これを相続人の廃除といいます。その非行としては以下のものが挙げられます。相続人が被相続人に対して虐待や重大な侮辱をしたこと相続人にその他の著しい非行があること ある者を相続人から廃除するには被相続人が生前に家庭裁判所に請求するか、遺言で廃除の意思(遺言廃除)を表示するかのどちらかの手続が必要ですが、遺言廃除の場合でもその相続人の廃除を家庭裁判所に申し立てる必要があります。例外:第3順位グループ(兄弟姉妹)を廃除の対象とすることはできません。これは兄弟姉妹には「遺留分」が存在しないことが関係しています。まとめ 以上、相続人の地位によって法律で決められている相続分が変わること、及び相続人の欠格・廃除によりその範囲が縮小したり、養子縁組によって相続人の範囲が拡大したりする場合について説明しました。本記事のポイントは以下のとおりです。法定相続分は、被相続人に対する相続人の地位によって変化する代襲相続によって相続人の範囲が拡大する養子縁組によって相続人の範囲が拡大する相続人の欠格・廃除によって相続人の範囲が縮小する行政書士に相談する
    Read More
  • 相続財産の確定と相続の承認
    相続財産の確定と相続の承認相続財産の確定 相続では被相続人の財産を確定することが最初にする作業です。推定相続人は、下記の被相続人のプラスとマイナスの財産を洗い出し、すべてを合算して相続財産の価額を決定します。 被相続人の金融資産 被相続人所有の自動車などの値段が付く動産 被相続人名義の不動産 被相続人の負債 被相続人がこれまでに推定相続人に贈与した財産 推定相続人の働きによって増加した被相続人の財産遺産を公平に分けるために考慮すること 生前贈与が既に行われている場合又は遺贈が行われる場合に法定相続分又は指定相続分どおりに被相続人の現有財産を遺産分割すると共同相続人間で不公平が生じる可能性があります。そのため、特別受益と寄与分に当たる金額を考慮して各相続人に分配する遺産の価額を決定する必要があります。特別受益は⑤に、寄与分は⑥に相当します。特別受益 遺贈された財産及び婚姻や養子縁組若しくは生計の資本として生前贈与された財産が特別受益に当たります。特別受益を受けた者が相続人の中にいる場合、特別受益の財産の価額を相続開始時の相続財産の価額に加えて各相続人に分配する遺産の価額を算定します(特別受益の持ち戻し)。ただし、遺贈財産は相続開始の時点では相続財産の中に含まれているため、遺贈財産の価額を改めて相続財産の価額に加える必要はありません。 しかしながら、被相続人がこのような修正を望まないこと(特別受益の持ち戻しを免除すること)を贈与契約書や遺言で意思表示した場合にはこのような修正を行いません。また、婚姻期間が20年以上になる配偶者に対して居住用不動産を遺贈又は贈与したときは、被相続人が特別受益の持ち戻しの免除を意思表示したものと推定し、遺産分割のための相続財産の中からこの不動産分を除きます。特別受益を考慮した相続分の具体的な修正方法 相続開始時の相続財産全体の価額に特別受益の価額を加算する。 相続財産の総額から各相続人に分配する金額を算定し、各相続人に分配する。 特別受益を有する相続人についてはその金額から特別受益の価額を差し引いた残額を分配する。寄与分 共同相続人の中に被相続人の財産の維持・増加に貢献をした相続人がいた場合、その相続人の貢献が被相続人の相続財産の中に含まれている(寄与分)と考え、このことを考慮して相続分を修正します。この貢献には次の行動が挙げられます。 被相続人の事業に関する労務の提供、 被相続人の事業に関する財産上の給付、 被相続人の療養看護、 その他(例:被相続人の事業に関係のない被相続人への財産上の給付)寄与分を考慮した相続分の具体的な修正方法相続開始時の相続財産全体の価額から寄与分を差し引く。寄与分を差し引いた残額から各相続人に分配する金額を算定し、各相続人に分配する。寄与分を有する相続人についてはその金額に寄与分の価額を加えた総額を分配する。特別の寄与 例えば、相続人の配偶者は、被相続人を療養看護して被相続人の財産の維持又は増加に貢献しても、遺産分割手続きにおいて財産の分配を請求することはできませんでした。被相続人の親族によるこの様な貢献を特別の寄与、その特別の寄与をした親族を特別寄与者と呼び、民法改正により特別寄与者は、相続開始後、相続人に対してその寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することができるようになりました。特別寄与料請求の条件:被相続人に対する特別寄与者の寄与が無償であったこと。請求期間:相続があったことを知ってから6か月まで、又は相続の開始から1年まで(特別受益と寄与分を考慮した遺産分割の例)相続発生時の被相続人の財産額:3000万円子Aが被相続人の介護に要した金額:600万円子Bが結婚時に結婚支度金として被相続人から得た金額:300万円 上記のような例を考えてみます。亡くなった被相続人の相続発生時の財産は3000万円でした。子Aが被相続人の介護のために支払ったお金は、寄与分に相当します。子Bが婚資として被相続人から得たお金は、特別受益に相当します。寄与分と特別受益を考慮した被相続人のみなし相続財産は以下の計算から算出されます。3000万円 - 600万円 + 300万円 = 2700万円 この2700万円に相続分の割合を掛け算し、それぞれの寄与分と特別受益の額で補正して各々の具体的な相続分を決定します。この例では法定相続分の割合を使用します。配偶者:2700万円×1/2=1350万円子A: 2700万円×1/4+600万円(寄与分)=1275万円子B: 2700万円×1/4-300万円(特別受益)=375万円 特別受益と寄与分を考慮していなかったら配偶者の相続分は1500万円、二人の子の相続分はそれぞれ750万円でした。ここで大事なことは、このルールは、遺留分の算出において考慮する贈与の期間(特別受益では相続発生前10年以内)や相続税額の算出において考慮する贈与の期間(相続発生前3~7年以内)とは無関係であるということです。すなわち、被相続人が亡くなるまでに被相続人から受けた又は被相続人に施した全ての特別受益と寄与が合算の対象になります。相続の承認と相続放棄 被相続人の財産に属した一切の権利義務は、相続開始の時から当然に相続人に承継されるものとされていますが、その中にはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産(債務)も含まれている場合があります。 民法は、相続人に対し、①被相続人の権利義務を全面的に承継するか(単純承認)、②相続財産の限度で債務を負担するか(限定承認)、又は③相続人にならないとするか(相続放棄)を選択することを認めています。熟慮期間 相続人は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月の熟慮期間中に被相続人の財産を調査し、単純承認、限定承認、又は相続放棄をすることを選択します。 限定承認をする場合、熟慮機関の起算点は、複数いる相続人のうち「最も遅く相続開始を知った日」とされます。 調査に時間がかかるような場合には家庭裁判所に対してこの期間を延長するように請求することができます。単純承認 被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も承継することをいいます。以下のいずれの場合も単純承認をしたものとみなされます。 相続財産を一部でも処分したとき 熟慮期間が経過したとき 家庭裁判所への限定承認・相続放棄の申述の後に相続財産を隠していたことや債権者に対して背信的行為をしていたことがわかったとき限定承認 相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務と遺贈を弁済すべきことを留保して承継を承認することをいいます。 相続人が複数あるときは、共同相続人の全員が共同して家庭裁判所に対して限定承認の申述を行う必要があるため、相続人の内の一人でも相続財産の一部を処分したときは全員で限定承認の申述を行うことができなくなり、単純承認することになります。相続放棄 相続放棄とは、相続人が被相続人の死亡により発生する相続の効果を、はじめからなかったものとして扱うための手続きをいいます。相続放棄をすると、その人は最初から相続人ではなかったものとみなされます。そのため、「マイナスの財産だけ相続放棄して、プラスの財産だけ受け取る」というようなことはできません。また、相続放棄した者の子や孫が代襲相続することも認められていません。 相続放棄は、熟慮期間内に家庭裁判所に申述することで行います。相続放棄すると他の相続人に負担を押し付けることになる可能性もありますので相続放棄を選択するときには事前に他の相続人と話し合ったほうがよいでしょう。 また、相続人の全員が相続放棄した場合、それによってすぐに相続財産中の土地や家屋の管理責任が無くなるわけではないことに注意が必要です(民法第940条)。相続人が一人もいないとき 相続人の全員が相続放棄した場合や相続人の全員が欠格・廃除により相続権を喪失している場合、相続財産がどのように処理されるか下の図で説明します。 相続人の全員が相続放棄した場合や相続人の全員が欠格・廃除により相続権を喪失している場合、利害関係人又は検察官が家庭裁判所に相続財産管理人(相続財産清算人)の選任を請求します。 家庭裁判所は相続財産管理人(相続財産清算人)を選任し、相続人・被相続人の債権者・受遺者の捜索の公告を出します。 家庭裁判所による捜索の公告があっても相続人が見つからない場合、相続人の権利が消滅し(相続人の不存在の確定)、相続財産管理人が相続財産の管理と清算を行います。 相続財産の清算に関し、被相続人と特別の縁故があった者(特別縁故者)が家庭裁判所に対して財産分与を請求してこれが認められると、相続財産の全部又は一部が特別縁故者に与えられます。 特別縁故者への財産分与もない場合、又は特別縁故者へ財産を分与してなお残余財産がある場合に初めてその残余財産が国庫に入庫されます。特別縁故者の例:内縁の妻、事実上の養子、被相続人の療養看護に努めた看護師や介護士等まとめ被相続人が各相続人に生前贈与した財産が特別受益に当たり、各相続人の相続分の指定に当たっては各特別受益を考慮する。被相続人の生前にその財産の維持増大に寄与した相続人に対して、その貢献に応じてその者の相続分を修正する。被相続人の生前にその財産の維持増大に寄与した相続人ではない被相続人の親族は、その貢献に応じた金銭を特別の寄与料として請求する権利を有する。相続人は、相続の開始を知ってから3か月以内に相続の単純承認若しくは限定承認、又は相続放棄を選択する。限定承認を行うには相続人の全員が共同して家庭裁判所に対して申述を行う。相続放棄した者の子や孫は代襲相続することができない。相続放棄した者が管理していた被相続人の財産の管理責任は、他の相続人が引き受けるまでその相続放棄者にある。
    Read More
  • 遺産の分割と配偶者居住権
    遺産の分割と配偶者居住権 前号の記事では遺産分割に当たって相続人と被相続人との間での利益の授受を考慮すべきである旨を説明しました。今号以降の記事では被相続人の死後の遺産分割の方法について説明します。遺産分割には幾つかの方式があり、今号の記事はそれらの方式の共通部分について説明しています。遺産分割の方法と注意点 相続は被相続人の死亡によって開始し、相続人が複数存在する場合にはその共同相続人が暫定的に相続財産を共有する形をとります。その後、相続財産は、被相続人の遺言に則って又は相続人間の遺産分割協議を経て相続人それぞれに分配されることになります。相続預金の払い戻し 各相続人は、遺産分割までは、相続財産を管理する相続人代表に対し、金銭等の可分の財産であっても当人へのその支払いを求めることはできません。例外:各相続人は、当面の必要生計費又は葬式の費用に充てるため、相続開始時の相続財産のうちの預貯金の額の3分の1に当該相続人に当てはまる法定相続分の割合を乗算した額の支払いを、150万円までを限度として求めることができます。遺産分割の効力 相続が発生すると共同相続人が相続財産を暫定的に共有することになりますが、遺産の分割がなされるとその効力は相続開始時に遡って生じます。ただし、遺産分割は第三者の利益を害することはできません。(例:被相続人が預貯金、不動産、及び株式を財産として有しており、相続人A、相続人B及び相続人Cが存在する場合) 相続開始時には相続人A、相続人B、及び相続人Cが預貯金、不動産、及び株式を三者で共有するが、預貯金を相続人A、不動産を相続人B、及び株式を相続人Cに配分する旨の遺産分割が相続人の間で決まった場合、各相続人は相続開始時からそれらの財産を所有していたことになる。 仮に相続人Aが遺産分割前に法定相続分に当たる不動産の持ち分を第三者に売却し、後に遺産分割で相続人Bがその不動産の全部を相続することになった場合、その第三者がその不動産の持ち分を登記していたら相続人Bはその不動産の全部を当然に自分のものだと主張することはできない(遺産分割は第三者の利益を害することはできないため)。遺産分割前の相続財産処分に対する対応 相続人の一人が遺産分割までに相続財産の一部又は全部を処分してしまったとき、他の相続人全員の同意があれば、処分した相続人の同意を得ずに、処分された財産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができます。被相続人による遺産分割の指定 被相続人は、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができます。このようにして定められた相続分を指定相続分といいます。 相続分の指定にあたっては、共同相続人の一部についてのみ相続分を指定することもでき、その場合に指定されなかった共同相続人の相続分は、指定相続分以外の部分について、法定相続分に従うことになります。遺産分割協議による遺産分割の指定 共同相続人は、いつでも共同相続人の協議で遺産の全部又は一部の分割をすることができます。遺産分割協議は、共同相続人全員で行う必要があり、相続人の一部を欠いた遺産分割協議は無効です。 ただし、被相続人が遺言で遺言と異なる遺産分割を禁じた場合には、共同相続人の協議で遺産分割を指定することはできません。共同相続人の中に行方不明者がいる場合 行方不明になった共同相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して「不在者の財産管理人」の選任を申し立て、選任された財産管理人がその行方不明者の法定代理人として遺産分割協議に参加します。共同相続人の中に制限行為能力者がいる場合 未成年者又は成年被後見人等の>制限行為能力者の代理人がその者の代わりに遺産分割協議に参加します。 未成年者の法定代理人(親権者又は未成年者代理人)が共同相続人の一人である場合(例えば、夫が亡くなった妻とその夫との間の未成年の子による相続の場合)、その未成年者のための遺産分割協議への参加は利益相反行為になるため、未成年者のために特別代理人の選任を要求する必要があります。遺産分割協議の期限 遺産分割協議に期限はありませんが、民法改正により相続開始から10年を経過した後にする遺産分割協議では特別受益及び寄与分を考慮せずに遺産分割をすることができ、原則として法定相続分又は指定相続分に従って遺産が分割されます。遺産分割協議における家庭裁判所の役割 共同相続人間で協議が調わないとき、又は協議ができないとき、各共同相続人は、遺産の全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができます。家庭裁判所は、まず調停により分割を試み、調停による分割が調わないときは審判による分割を行います。遺産分割協議書 遺産分割協議は、書面を作成し、各相続人が押印をして遺産分割協議書とすることで行います。遺産分割協議書は、被相続人所有の不動産や預貯金の名義変更の手続きにも必要になります。配偶者居住権 配偶者居住権とは、被相続人が所有していた住宅について、その所有権を有しない配偶者が、被相続人の死後もその住宅に住み続けられるように認められた権利です。 配偶者にこの権利を設定する方法としては、遺贈、死因贈与契約、又は遺産分割協議によって行うことができます。配偶者居住権とは?配偶者居住権の特徴被相続人の配偶者は、相続の結果として住宅の所有権の全部を相続していなくても相続発生時に被相続人と居住していた住宅に住むことができる。遺産分割協議によって配偶者居住権を取得するものとされたとき、又は遺言により遺贈の目的とされたときに配偶者は配偶者居住権を取得する。配偶者と被相続人との婚姻期間が20年以上であるとき、配偶者居住権の遺贈についても特別受益の持ち戻しがあったものとする。被相続人が第三者と共有していた住宅については配偶者居住権を設定できない。所有者の義務:配偶者居住権が設定された住居の所有者は、被相続人の配偶者に配偶者居住権の登記を備えさせる義務を負います。存続期間:配偶者居住権の存続期間は、原則としては配偶者の終身の間ですが、遺産分割協議又は遺言によって別途定めることができます。配偶者短期居住権 配偶者は、配偶者居住権を取得できなかったときでも、配偶者短期居住権を取得できます。配偶者が欠格又は廃除により相続権を有していなかった場合には、その配偶者は配偶者短期居住権を取得できません。存続期間:下記のいずれかまで。 遺産分割で居住建物の帰属が確定した日、又は相続開始時から6か月を経過する日のどちらか遅い日まで 居住建物取得者による配偶者短期居住権の消滅申し入れの日から6か月を経過する日まで相続財産の評価額への影響 相続財産である住居について遺贈により配偶者居住権を設定すると、二次相続の時に配偶者居住権の評価額の分だけ相続財産の評価額が低くなるという副次的な効果があります。まとめ各相続人は、遺産分割までは相続財産の一部の当人への支払いを要求することができない。被相続人は、各相続人の相続分を指定することができる。遺産分割協議に期限はない。相続開始から10年を経過した後にする遺産分割協議では特別受益及び寄与分を考慮しない。相続人の中に行方不明者又は未成年者若しくは制限行為能力者がいる場合にはその者の代理人が遺産分割協議に参加する。相続人の中に行方不明者又は未成年者若しくは制限行為能力者がいる場合にはその者の代理人が遺産分割協議に参加する。被相続人の配偶者は、相続の結果として配偶者居住権を得られる。 行政書士は、相続人のために被相続人の相続人調査及び財産調査をし、それらの調査を基に遺産分割協議書を作成することができます。行政書士に相談する  
    Read More
  • 遺言と遺贈
    遺言と遺贈 これまでの記事では相続人の範囲と遺産分割協議による遺産分割について説明してきました。本記事では遺言による遺産分割について説明します。遺言には三方式があり、それぞれにメリットとデメリットがあること、及びそれらの方式に共通する特徴を説明します。 また、相続人以外の者に遺産を遺す方法である遺贈について説明します。遺言制度の特徴 遺言は、自分の財産を自分が望むような分け方で死後に分配するための制度と言えます。15歳以上の人は、遺言をすることができます。遺言は、遺言をするときにその能力を有していれば遺言を作成することができます。 遺言をするには、幾つかの決まりがあり、これらの決まりを満たしていない遺言は無効になります。一般に用いられる遺言の方式には三種類がありますが、これらに共通のルールとして「共同遺言の禁止」というものがあります。これは、一通の遺言証書には一人分の遺言しか記載できないというルールです。例えば、夫婦連名の遺言を一通の証書で済ますことはできません。遺言でできること 遺言によって次の行為をすることができます。遺言者の死後の遺産分割又は相続分の指定遺贈相続人の廃除又は廃除の取消し子の認知遺産分割の禁止担保責任の(分担の)指定祭祀承継者の指定遺言執行者の指定又は指定の委託 近親者以外の成年後見人や未成年後見人の利益になるような遺言は無効です。遺言のメリットとデメリットメリットの例相続手続きの負担を相続人のために軽減できる遺言をしないことによる相続人間での遺産を巡るトラブルを予防できる相続人以外の大事に思う存在に財産を遺せるデメリットの例遺言で財産の受取人に指定された相続人は、財産の受け取りを拒否できる相続人間で遺留分を巡る争いが生じ得る共同相続人と受遺者の全員が合意すれば遺言の内容とは異なった方式で遺産を分割できる遺言の方式自筆証書遺言 自筆証書遺言とは、遺言者が、その全文、日付、及び氏名を自書し、押印して作成する方式の遺言です。この方式の遺言をワープロ等で作成することは許されていません。これは、筆跡によってその証書が確かに遺言者によって作成されたものであることを証明するためです。 遺言者は、作成した遺言証書を自分で保管することができ、特定の法務局において管理保管してもらうこともできます。法務局に自筆証書遺言を保管する際に通知制度の利用を選択すると、遺言者の死亡時に自筆証書遺言が指定した人物の元へ届きます。公正証書遺言 公正証書遺言とは、遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で伝え、公証人がその内容を筆記し、遺言者及び二名以上の証人が自署押印して作成する方式の遺言です。障害のために口頭で伝えることができない人については、手話通訳者を介して又は自書によって公証人に遺言書の内容を伝えることになります。最後に公証人が署名押印して公正証書の形式にすることで公正証書遺言が完成します。 公正証書遺言の正本は公証役場で保管され、公正証書遺言の謄本が遺言者本人に交付されます。秘密証書遺言 秘密証書遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言の性質を併せ持った遺言と言えますが、実際に秘密証書遺言の方式で遺言を作成する例は少ないため、ここでは説明を省きます。財産目録について 遺言証書には相続財産の目録を添付することができます。財産目録はワープロで作成されたものであってよく、自署押印してこれを遺言証書に添付します。遺言作成の流れ 公正証書遺言の方式で遺言書を作成する流れを紹介します。必要書類遺言者本人の3か月以内に発行された印鑑登録証明書又は有効期限内の顔写真付き公的身分証明書遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本や除籍謄本の全て(相続人の現在の戸籍謄本を含む)財産を相続人以外の自然人に遺贈する場合ではその人の住民票、法人に遺贈する場合ではその法人の登記事項証明書相続財産に不動産がある場合ではその不動産の登記情報及び固定資産税評価証明書金融資産についての確認書類証人2名の氏名・職業・住所・生年月日のメモ公正証書遺言作成の流れステップ遺言原案の作成遺言者は、希望する遺言の内容を書き出し、内容を検討します。遺言者が遺言作成に関して支援者にサポートを依頼する場合には、遺言で財産受取人に指定した人々に関する証明書類等を用意しておきます。ステップ公証役場への連絡公証役場に連絡して遺言書の原案と資料を提出します。公証人に遺言書原案の内容を確認してもらい、内容の調整をします。その後、遺言公正証書の作成日時を予約します。ステップ証人の確保公正証書遺言方式による遺言書の作成には2名の証人が必要です。未成年者、推定相続人、受遺者(遺贈を受ける人)、ならびに推定相続人及び受遺者の配偶者及び直系尊属等は証人になれません。ステップ公正証書遺言の作成遺言の当日に遺言者が証人と共に公証役場へ行くか、又は公証人が証人と共に遺言者の自宅若しくは病室に出張します。遺言者が公証人に遺言の内容を伝え、公証人が遺言公正証書の原本の内容を遺言者及び2名の証人に読み聞かせます。最後に全員が署名押印して公正証書遺言の手続が完了します。遺言の撤回・変更 遺言者は、遺言の作成後、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができます。ただし、遺言を撤回する権利を放棄することはできません。自筆証書遺言の場合 自筆証書遺言を一部撤回し、これを変更する場合、その変更箇所を指示し、変更した旨を付記してこれに署名をし、さらに変更した場所に押印をすると変更が有効になります。 新しい遺言を適格に作成することで古い遺言は法的に無効になります。法務局に預けた自筆証書遺言を撤回し、これを変更する場合では、法務局に遺言の保管申請の撤回手続をして撤回を行います。公正証書遺言の場合 公正証書遺言を撤回し、これを変更する場合には、公証役場で公正証書遺言の撤回の申述をして撤回を行います。その後、それぞれの遺言の方式に従って、新しい遺言についてそれぞれの手続を行います。遺言の効力の発生時期 遺言は、法定の方式に従って作成したときに成立しますが、その効力は遺言者が死亡したときに生じます。自筆証書遺言の場合 自筆証書遺言方式の遺言者が死亡したとき、自筆証書遺言の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所に遺言書を提出して家庭裁判所による検認を受けなくてはなりません。検認手続きを経ずに遺言の執行を行った場合、過料に処せられます。ただし、上で述べた自筆証書遺言の法務局による保管制度を利用した場合、検認手続きを省くことができます。秘密証書遺言の場合 秘密証書遺言方式の遺言も検認手続きを必要としますが、秘密証書遺言は、法務局による遺言保管制度の対象とされていません。公正証書遺言の場合 公正証書遺言方式で遺言をした場合、検認手続きを必要とせず、さらに、遺言の原本が公証役場に保管されます。遺贈で相続人以外に財産を遺す 遺贈とは、遺言する者(遺言者)が遺言により他人に自分の財産の一部又は全部を贈与することをいいます。遺言者は、遺言の中で当然に自己の財産の分割について指定をすることができますが、同じ遺言書の中で相続人に対する指定と相続人以外の者(受遺者)に対する指定をすることができます。 例えば、孫に財産の一部を与えたい場合、その孫が代襲相続人でなければ、遺贈することになります(代襲相続人であれば相続になる)。また、特別寄与者に財産の一部を与える場合も遺贈を用いることになります。不動産の遺贈 遺贈には注意も必要です。遺贈という形での譲渡された財産の中に不動産がある場合、その不動産に対して相続税に加えて登録免許税及び不動産取得税の両方が課税されます。この不動産を相続により受け継いだ相続人と遺贈により受け継いだ相続人以外との間では登録免許税の税率が異なり、下で説明する特定遺贈により不動産を受け継いだ場合にはその不動産には不動産取得税がかかります。 相続時に不動産にかかる税金についてさらに詳しく知りたい方は本サイトの別記事「不動産の相続・遺贈と相続税以外の税金」をご参照ください。特定遺贈と包括遺贈の違い 遺贈の方式としては具体的な財産名を挙げて遺贈する「特定遺贈」及び具体的な割合を挙げて遺贈する「包括遺贈」が存在します。 「包括遺贈」の受遺者は、相続が発生したら相続人と共に遺産分割について協議する必要があり、負の財産を引き受ける可能性もあります。そのため、包括遺贈の受遺者は相続人と同様に遺贈を承認・放棄する権利を有します。遺贈の放棄 包括遺贈の放棄は、相続の開始があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申述書を提出して行います。「特定遺贈」の受遺者も同様に遺贈の承認・放棄する権利を有していますが、相続人及び包括遺贈の受遺者と異なり、特定遺贈の放棄は、家庭裁判所を介することを要せず、遺言執行者又は他の相続人に意思表示して行います。遺言書に記載されていない財産の扱い 遺言書に記載されていない被相続人の財産があっても遺言書は有効です。遺言書に記載されていない被相続人の財産は、遺産分割協議を経て分割されることになります。まとめ遺言者は、各相続人の相続分を指定することができる。遺言者は、相続人以外の者に自己の財産の全部又は一部を遺贈することができる。遺贈の方式には包括遺贈と特定遺贈がある。遺贈の受遺者に指定された者は、遺贈を承認又は放棄することができる。遺言書に記載されていない財産は、遺産分割協議を経て分割される。お問い合わせはこちらをタップ/クリック
    Read More
  • 相続税の税額はどのように決まる?
    相続税の税額はどのように決まる? 本記事は、国税庁ホームページの記載に基づいて相続税及び贈与税の仕組みを説明するものであり、遺産の配分を考えるときの参考になることを目的としています。本記事は個別具体的に相続税及び贈与税を計算することを目的としたものではないため、正確な税金の額を計算したい方は税理士にご相談ください。相続財産の評価 相続における遺産分割の手順と同じで被相続人の財産を評価することが最初にする作業です。相続税の課税財産相続税の納税義務者と課税財産納税義務者被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した個人被相続人からの贈与について相続時精算課税の適用を受けた個人 納税義務の範囲は、被相続人及び相続人又は受遺者が日本国内に住所を有しているか否か又は日本国籍を有しているか否かで少しずつ異なってきますが、本記事では説明しません。本記事は、被相続人及び相続人又は受遺者の双方が日本国内に居住する日本国籍保有者である場合の相続税の課税について説明します。課税財産本来の課税財産みなし相続財産相続開始前7年以内に贈与を受けた暦年課税に係る財産相続時精算課税の適用を受けた財産 「本来の課税財産」とは、相続又は遺贈により相続人又は受遺者が取得した財産を指します。 「みなし相続財産」とは、生命保険金等や退職手当金等、法律的には相続又は遺贈により取得したものではないが、実質的に相続又は遺贈により取得したと言える財産を指します。「暦年課税制度」及び「相続時精算課税制度」 暦年課税制度とは、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額を基に贈与税額を計算する課税制度です。その年の贈与の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残額について贈与税額を計算します。 令和6年1月1日以前の贈与では相続開始前3年間に発生した贈与で被相続人から相続人が取得した財産を相続財産に加算して相続税額を計算していましたが、税制の改正により令和6年1月1日以降の贈与ではその3年間の期間が7年間にまで延長されました。ただし、延長した4年間については毎年100万円を控除した残額が相続財産に加算されます。この税制改正の影響は、令和9年1月1日以降の相続税の計算に現れます。令和10年から令和13年にかけて1年ずつ加算期間が延長される計画になっています。 相続時精算課税制度とは、贈与財産から相続時精算課税の特別控除額を差し引いた残額に一定の税率を乗じて算出した金額の贈与税を納付し、贈与者が亡くなって発生した相続税から納付済みの贈与税を控除する制度です。相続時精算課税制度については別の記事で詳しく説明します。 暦年課税制度と相続時精算課税制度の詳細は、本ブログの別記事「相続の手段としての生前贈与」にて説明しています。「特別受益(生前贈与)の持ち戻し」について 暦年課税制度において相続税の計算の対象となる生前贈与された財産は、相続発生から7年前までに被相続人から相続人に贈与により移転した財産です。しかしながら、この期間は相続税の計算上のことであり、遺産分割における「特別受益の持ち戻し」には関係しません。つまり、特別受益に相当する財産には相続発生7年前よりも前に贈与された財産も含まれます。被相続人の財産を相続人間で配分するときには相続発生時の被相続人の財産の価額にこの特別受益の価額及び寄与分の価額を合計して決定します。相続税の非課税財産非課税財産の例墓所、霊廟及び祭具並びにこれらに準ずるもの一定の公益を目的とする事業を行う者が取得した当該公益事業の用に供する財産相続人が取得した生命保険金等のうち一定の金額相続人が取得した退職手当金等のうち一定の金額 生命保険金等及び退職手当金等のうち一定の金額は、それぞれ、(500万円×法定相続人の数)の計算式で算出されます。この「法定相続人の数」は、相続放棄をした法定相続人がいたとしても変わりません。 民法では養子は相続人になれますが、相続税法では相続税の計算に算入できる養子の数に制限があります。被相続人に実子がいる場合では相続税の計算に算入できる養子は一人まで、被相続人に実子がいない場合では相続税の計算に算入できる養子は二人までです。ただし、以下の者は実子と同様にみなされます。なお、この養子の制限は、遺産に係る基礎控除額の計算及び相続税総額の計算についても当てはまります。実子とみなされる養子特別養子縁組により養子となった者配偶者の実子で、被相続人の養子になった者配偶者の特別養子縁組により養子となった者で、被相続人の養子になった者実子等の代襲相続人 相続税の計算では養子の数に制限がありますが、これは遺産分割について相続人となる養子の数に制限があるという意味ではありません。ご注意ください。債務控除 相続人又は包括受遺者が承継した被相続人の債務の金額は、取得財産の総額から控除されます。控除が認められる債務には次のものがあります。控除が認められる債務相続人又は包括受遺者が承継した債務被相続人の債務で相続発生の際現に存在する債務(公租公課等)確実と認められる債務 「確実と認められる債務」とは「確実と認められない債務」ではない債務であり、例えば、保証債務が「確実と認められない債務」に相当します。保証債務は、債務者の借金の保証人としての被相続人の立場を承継した者が借金を債務者の代わりに支払っても後で債務者から支払った金額を返却される可能性があるため、確実と認められない債務なのです。 債務とは異なりますが、被相続人の葬式の費用を被相続人の財産の中から支払った場合、相続人又は包括受遺者が取得した財産の価額からその葬式の費用を控除することができます。ただし、葬式の費用のうち、控除することができない費用(香典返しの費用等)もあるので注意が必要です。相続財産の評価 相続財産の中には預貯金以外にも証券及び自動車などの動産並びに不動産のような物もあります。相続税の税額を計算するためにはこれらの物に価額を付ける必要があります。これらの物の価額は、被相続人がこれらの物を取得したときの価額(取得価額)ではなく、相続が発生したときの時価によります。土地の評価 土地の評価は、宅地、田、及び山林などの地目別に判断されます。さらに、土地の評価は、土地の上にある権利によっても変わってきます。例えば、宅地が借地である場合、その土地の相続税評価額は(自用地価額×借地権割合)の計算式で算出されます。表1.宅地の内容と評価額内容評価額宅地が借地である自用地価額×借地権割合宅地を貸している自用地価額-自用地価額×借地権割合宅地の上に貸家を立ててその貸家を貸している自用地価額-自用地価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合 土地の評価には路線価方式と倍率方式があります。路線価方式によって評価することとされている地域内にある宅地は路線価方式で評価されます。 路線価が定められていない地域の土地は倍率方式で評価されます。倍率方式は、評価する土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算した金額によって評価する方式です。固定資産税評価額は、市役所や町村役場で確認できるほか、固定資産税の納税通知書にも記載されています。倍率は、国税庁ホームページ内の評価倍率表で確認できます。 宅地が路線価方式で評価される場合、その宅地が二本以上の道路に接している等の特徴によって評価額が変わってきます。正確な土地評価額を知るためには土地家屋調査士や相続を専門とする税理士に相談するとよいでしょう。 市街地には路線価が定められているため、農地が市街地又は市街地の周辺に存在する場合ではその農地の評価方法が複雑です。正確な土地評価額を知るためには専門家に相談するとよいでしょう。私道の評価 私道には、不特定多数の者の通行の用に供する通り抜け道路と専ら特定の者の通行の用に供する行き止まり道路があります。通り抜け道路である私道については評価を行いません。これに対し、行き止まり道路である私道は、路線価方式又は倍率方式で評価した価額の30パーセントの価値があると評価されます。小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(小規模宅地等の特例) 被相続人等の居住の用又は事業の用に供されていた宅地等については一定の要件を満たす場合に相続税の課税価格から一定の額を減ずることができます。ただし、この特例は以下の宅地等には適用できません。相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除の適用を受けた特例事業受贈者に係る贈与者から相続または遺贈により取得した特定事業用宅地等個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除の適用を受ける特例事業相続人等に係る被相続人から相続または遺贈により取得した特定事業用宅地等 小規模宅地等の特例を適用することができる宅地等には以下のものがあります。特定居住用宅地等 相続開始の直前において区分1.被相続人の居住の用に供されていた宅地等区分2.被相続人と生計を一にする親族の居住の用に供されていた宅地等表2.特例の適用を受ける取得者の要件区分取得者取得者等ごとの要件1-1被相続人の配偶者要件なし1-2被相続人の居住の用に使用されていた一棟の建物に居住していた親族(子など)相続開始の直前から申告期限までその住居に居住し、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有している1-31-1及び1-2以外の親族(以下の全ての要件を満たすこと)(i) 被相続人に配偶者や同居の親族がいない(ii) 宅地を相続した親族は、相続開始の3年前までに国内にある「自分又は自分の配偶者」、「3親等以内の親族」、又は「自分と特別な関係にある特定の法人」が所有する家屋に居住したことがない(iii) その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで保有している(iv) 相続開始時に居住している家屋を過去に保有していたことがない2-1被相続人の配偶者要件なし2-2被相続人と生計を一にしていた親族相続開始前から申告期限までその住居に居住し、その宅地等を相続税の申告期限まで有している表3.効果限度面積減額される課税価格の割合330 m280% 特にケース1-3の特例を、被相続人と同居していなくても使用できる小規模宅地等の特例ということから、業界では「家なき子特例」と呼びます。特定事業用宅地等 相続開始の直前において区分1.被相続人の事業の用に供されていた宅地等区分2.被相続人と生計を一にする親族の事業の用に供されていた宅地等 特定事業は、貸付事業以外の事業になります。表4.特例の適用を受ける取得者の要件区分事業継続要件保有継続要件1その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、その申告期限までその事業を営んでいるその宅地等を相続税の申告期限まで有している2相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいるその宅地等を相続税の申告期限まで有している表5.効果限度面積減額される課税価格の割合400 m280% 相続の開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等は、原則として特定事業用宅地等に該当しませんが、例外的に特定事業用宅地等に該当する場合もあります。特定同族会社事業用宅地等 相続開始の直前において、被相続人及び被相続人の親族等が法人の50%超の発行済株式を有しているか出資をしているその法人の事業の用に供されていた宅地等 特定同族会社事業は、貸付事業以外の事業になります。表6.特例の適用を受ける取得者の要件法人役員要件保有継続要件相続税の申告期限においてその法人の役員であるその宅地等を相続税の申告期限まで有している表7.効果限度面積減額される課税価格の割合400 m280%貸付事業用宅地等 相続開始の直前において区分1.被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等区分2.被相続人と生計を一にする親族の貸付事業の用に供されていた宅地等表8.特例の適用を受ける取得者の要件区分事業継続要件保有継続要件1その宅地等に係る被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、その申告期限までその貸付事業を営んでいるその宅地等を相続税の申告期限まで有している2相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等に係る貸付事業を営んでいるその宅地等を相続税の申告期限まで有している表9.効果限度面積減額される課税価格の割合200 m250% 相続の開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は、原則として貸付事業用宅地等に該当しませんが、例外的に貸付事業用宅地等に該当する場合もあります。 それぞれの小規模宅地等について、要件を満たしており、かつ、取得することになった宅地等の面積が限度面積を超えている場合、その限度面積について課税価格が表示の割合で減額されます。 特定居住用宅地と特定(同族会社)事業用宅地等を同時に取得することになった場合でも双方について課税価格が減額されますが、貸付事業用宅地等と他の種類の小規模宅地等を同時に取得することになった場合では宅地等の面積について制限があります。家屋の評価 家屋の価額は、1棟ごとに、その家屋の固定資産税評価額により評価します。貸家の価額は、その家屋の固定資産税評価額を基に借家権割合と賃貸割合から計算します。その計算式は、(固定資産税評価額-固定資産税評価額×借家権割合×賃貸割合)になります。株式の評価上場株式の評価 上場株式の価額は、その株式が上場されている金融商品取引所が公表する次のAからDの価額のうちの最低の価額になります。A. 被相続人が死亡した日(課税時期)の最終価格(終値)B. 課税時期の属する月の毎日の最終価格の平均額C. 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の平均額D. 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の平均額 株式が2以上の金融商品取引所に上場されている場合では納税義務者が金融商品取引所を選択します。非上場株式の評価 金融商品取引所に上場されていない株式の評価は、税理士に依頼されるとよいでしょう。ここでは非上場株式の原則的評価方式の概略を説明します。 まず、対象となる株式を発行している会社をその総資本価額、従業員数、及び取引金額により大会社、中会社、及び小会社のいずれかに分類します。 大会社に分類された会社の非上場株式の評価額は、類似業種の株価を参照してその会社の一株当たりの「配当金額」、「利益金額」、及び「純資産価額」で比準して決定されます。これを類似会社比準方式といいます。 小会社に分類された会社の非上場株式の評価額は、「相続税評価額により計算した会社の総資産価額」より相続税評価額により計算した負債の額」及び「評価差額に対する法人税額等相当額」を差し引いた残額を課税時期における発行済み株式数で除して決定されます。これを純資産価額方式といいます。 中会社に分類された会社の非上場株式の評価額は、大会社の類似会社比準方式と小会社の純資産価額方式を併用することにより決定されます。公社債の評価 債券には利付債と割引債がありますが、どちらも課税時期におけるその債権の価額が評価額になります。個人向け国債の場合では、その国債の額面金額に経過利子相当額を加算し、そこから中途換金調整額を差し引いた残額がその国債の評価額になります。自動車の評価 被相続人が所有していた自動車の評価額は、①その自動車の市場における買取価格、②その自動車の買取業者による査定額、③実際の売却代金額、又は④減価償却により計算した価額になります。課税遺産総額の計算 遺産分割協議又は遺言により各相続人が被相続人から承継することになった以下の財産の価額の総額を計算する。本来の課税財産みなし相続財産相続開始前7年以内に贈与を受けた暦年課税に係る財産相続時精算課税の適用を受けた財産 総額から以下の価額を差し引いて正味の遺産額を求める。非課税財産控除が認められる債務葬式費用 正味の遺産額から基礎控除額を減算して課税遺産総額を求める。(基礎控除額) = (3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)※法定相続人の中に相続放棄した者がいたとしても、基礎控除額の計算では相続放棄がなかったものとして計算します。(課税遺産総額) = (正味の遺産額) - (基礎控除額) 相続した金融財産等の価額が基礎控除額以内であったとしても相続税の申告を行ったほうがよいと言われています。相続税の計算 前ページで説明した課税遺産総額を各相続人の法定相続分により按分し、それぞれの金額について以下の表において記載される税率と控除額から各相続人の相続税額を算出します。 こうして求めた相続税の総額を求め、各相続人が取得した被相続人の財産の実際の割合をこの総額に乗じて各相続人の相続税額を計算します。表10.相続税の税率早見表(令和6年4月1日現在)法定相続分に応ずる取得金額税率控除額1,000万円以下10%-1,000万円超~3,000万円以下15%50万円3,000万円超~5,000万円以下20%200万円5,000万円超~1億円以下30%700万円1億円超~2億円以下40%1,700万円2億円超~3億円以下45%2,700万円3億円超~6億円以下50%4,200万円6億円超~55%7,200万円 相続人となった者が被相続人から2親等以降である場合(被相続人の兄弟姉妹、甥姪、及び養子にした被相続人の孫に相当)、その相続人の相続税額は2割加算の対象です。 その後、各相続人について税額控除の額を相続税額から控除したり配偶者の税額軽減をしたりして実際に支払うべき相続税額を算出します。相続税の軽減・控除 各相続人の属性によって各相続人が支払う相続税を軽減できる場合があります。以下にそのような制度を説明します。配偶者に対する相続税額の軽減 本制度は、被相続人の配偶者が支払う相続税を軽減するためのものであり、税額を軽減するための計算式が定められています。 (配偶者税額軽減額)=(相続税の総額) × (①と②のうちの少ない方) / (課税遺産総額) ①:配偶者の法定相続分に相当する額(1億6000万円未満であったら1億6000万円とする) ②:配偶者が実際に取得した額 配偶者が実際に支払う相続税の金額は、この計算式で算出された軽減額を配偶者の相続税額から差し引いた残額になります。なお、被相続人の配偶者にあたる人物が被相続人と内縁関係であった場合にはこの制度は適用されません。未成年者控除 被相続人の財産を取得した者が法定相続人であり、かつ、未成年者である場合に未成年者控除が適用されます。本制度は、日本国内に住所を有する未成年者を対象としていますが、その未成年者が日本国内に住所を有していなくても対象になる場合もあります。控除金額は、次の計算式から算出されます。 (未成年者控除額)=10万円 × (18歳 - その未成年者の年齢) 年数の計算に関し、1年未満の期間は1年に切り上げます。令和4年より成年年齢の変更に伴い計算式中の20歳が18歳になりました。 未成年者が実際に支払う相続税の金額は、この計算式で算出された金額を未成年者の相続税額から差し引いた残額になります。 未成年者の控除額がその未成年者の相続税額よりも大きい場合、未成年控除額とその未成年者の相続税額の差額は、その未成年者の扶養義務者である相続人の相続税額を軽減するために利用可能です。障害者控除 被相続人の財産を取得した者が法定相続人であり、かつ、85歳未満の障害者である場合に障害者控除が適用されます。 本制度は、日本国内に住所を有する障害者を対象としています。控除金額は、次の計算式から算出されます。 (障害者控除額) = 10万円 × (85歳 - その障害者の年齢) 年数の計算に関し、1年未満の期間は1年に切り上げます。 85歳未満の障害者が実際に支払う相続税の金額は、この計算式で算出された金額を障害者の相続税額から差し引いた残額になります。障害の等級が1級である特別障害者の場合では計算式中の10万円が20万円になります。相次相続控除 相次相続控除は、10年以内に続けて相続が発生した場合に前回の相続で課された相続税額のうちの一定額を新たに発生した相続に係る相続税額から控除する制度です。 次の要件に当てはまる人が相次相続控除の対象者です。被相続人の相続人であるその相続の開始前10年以内の相続により被相続人が財産を取得しているその相続の開始前10年以内の相続により被相続人が取得した財産について、被相続人に相続税が課されている 例えば、父親の死亡から10年以内に母親も死亡して母親の相続が発生した場合、父親(母親にとっての夫)の死亡時に母親が父親の遺産を部分的にでも取得して相続税を支払っていたらその両親の子は相次相続控除の対象者です。 各相続人の相次相続控除額は、次の計算式で求められます。 (相次相続控除額)=A × C / (B - A) × D / C × (10 - E) / 10 式中、C / (B - A)が100/100を超えるときは100/100とします A:今回の被相続人が前回の相続で取得した財産に対して課された相続税額 B:今回の被相続人が前回の相続で取得した純資産価額 C:今回の相続で相続、遺贈及び相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した全員の純資産価額の合計額 D:相次相続控除の適用を受ける相続人が取得した純資産価額 E:前の相続から今回の相続までの期間(1年未満は切り捨て) この計算式における「総資産価額」とは、取得財産と相続時精算課税の適用を受ける財産の価額から債務および葬式費用の金額を差し引いた金額になります。 各相続人が実際に支払う相続税の金額は、この計算式で算出された控除額をその相続人の相続税額から差し引いた残額になります。外国税額控除 外国税額控除とは、海外にある被相続人の相続財産について相続人が外国の法令によって相続税等を課せられた場合にその金額をその相続人の相続税額から控除することです。暦年課税分の贈与税額控除 相続人になる者が被相続人から暦年課税に係る財産を取得し、その財産について贈与税を支払っていた場合、その被相続人の相続によりその相続人に課せられた相続税額から支払った相続税の金額を控除することができます。これを暦年課税分の贈与税額控除といいます。相続時精算課税の適用を受けた贈与に係る贈与税額の控除 この制度では、相続時精算課税の適用を受けた贈与財産に課せられた贈与税について、その財産の受贈者である相続人は、その相続税額から当該贈与税額を控除することができます。当該贈与税額が相続税額よりも大きい場合、当該相続人は贈与税額と相続税額の差額分の還付を受けることができます。まとめ ここまで、相続税の税額がどのように決まるのか解説してきました。流れをまとめると次のようになります。 被相続人が亡くなったら被相続人の財産を課税財産、非課税財産及び控除が認められる債務等に分類する 課税財産、非課税財産及び控除が認められる債務等の価額並びに法定相続人の数で決まる基礎控除額から課税遺産総額を計算する 課税遺産総額を相続人の法定相続分で按分して各相続人についての相続税額を計算し、それらを合計して総相続税額を求める 各相続人が実際に取得した相続財産の割合を総相続税額に乗じて各相続人の相続税額を計算する 各相続人の属性に応じて利用可能な控除制度を用いて各相続人の相続税額を修正し、各相続人が支払うべき相続税額が決まる 相続発生後の相続税の計算について心配な方は税理士にご依頼ください。 相続発生前の遺言の作成で各相続人への遺産の分配について心配な方は行政書士にご相談ください。
    Read More
  • 非農家が農地を相続したときに読む話
    非農家が農地を相続したときに読む話 あなたが農業とは関係のない仕事を選択して街で生活していて相続で農地を引き継ぐことになったとしたら、あなたは農地の相続に関して何から始めますか。農地の相続手続きは、宅地等の相続手続きとは異なる点があります。本記事は、農地(採草放牧地を含む)を相続したときにする手続き等を説明します。農地の相続と処分農地の評価 農地も相続税の対象です。ここでは、国税庁タックスアンサーNo. 4623に基づいて農地の評価方法を説明します。 国税庁は農地を下記の四種類に分類しています。 純農地 中間農地 市街地周辺農地 市街地農地 相続した農地がどの区分に該当するのかは、国税庁の評価倍率表を見ることでわかります。評価倍率表では(1)純農地、(2)中間農地、(3)市街地周辺農地及び(4)市街地農地はそれぞれ純、中、周比準、及び比準又は市比準の略称で記載されています。純農地及び中間農地の評価 純農地及び中間農地の評価額は、下記の計算式により得られます。評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率表に記載されている倍率市街地周辺農地の評価 市街地周辺農地の評価額は、下記の計算式により得られます。評価額 = 当該農地が市街地農地であるとした場合の価額 × 0.8市街地農地の評価 市街地農地の評価は、その農地が宅地であると仮定する宅地比準方式により実施し、下記の計算式により市街地農地の評価額が得られます。評価額 = (当該農地が宅地であると仮定した場合の1 m2当たりの価額 - 1 m2当たりの造成費) × 地積 宅地であると仮定した場合の1 m2当たりの価額は、その土地が存在する場所の評価が路線価方式で行われているのであれば路線価であり、倍率方式で行われているのであれば固定資産税評価額に倍率を乗じて算出される価額です。 市街地農地が三大都市圏において500 m2を超える場合、それ以外の地域において1,000 m2を超える場合には、その農地の評価額は、宅地比準方式で算出された評価額に規模格差補正率を乗じて計算されます。市街地農地又は市街地周辺農地(市街地農地等と総称します)を相続や贈与により取得した人は、相続税又は贈与税の申告に際し、相続税又は贈与税の申告書に市街地農地等の評価明細書を添付します。相続の届出 農地を相続したときは、農地の相続登記に加えて農地の相続の届出をしなくてはなりません(農地法第3条の3)。対象者相続によって農地の権利を取得した人包括遺贈によって農地の権利を取得した人例外 特定遺贈によって農地の権利を取得した場合、届出ではなく、農業委員会の許可が必要です。届出先 農地の相続の届出先は、その農地が所在する市町村の農業委員会です。各農業委員会の窓口やホームページに届出の様式があります。相続した農地が土地改良区の受益地である場合 土地改良区の組合員資格得喪通知書を土地改良区に提出します。相続した農地が土地改良区に該当するか否かは、農業委員会に確認してください。相続した土地の地目が森林の場合 市町村長への事後届出が必要です。実際には相続した土地のある市町村の林業担当課に届け出ます。期間 農地の相続の届出期間は、相続発生からおおむね10か月です。農地や山林の相続時に必要な書類 不動産の相続手続のために登記簿謄本、名寄帳や評価証明書、及び公図を取得することはよく知られていると思います。相続した不動産の中に農地や山林が含まれている場合、これらの書類に加えて役所の資産税課等で地番図を取得しておくとよいでしょう。農地の相続登記 農地の相続登記は、宅地の相続登記と同様に法務局で行います。農地の相続人は、その相続が発生したことを知った日から3年の間に登記の申請をしなければなりません。相続後の農地の処分(活用) 相続した農地の活用法としては「①自分で農業をする」、「②他の農業者に農地を貸す」、「③農地を転用する」及び「④農地を売却する」が考えられます。農業をする・農地を転用する 相続した農地で農業をする場合、農業用水等は他の農業者との共用になっていることもありますので当地の自治体で新規就農に関して相談することをお勧めします。 農地を宅地や工場用地等に転用する場合にはその農地が所在する都道府県の知事の許可が、4ヘクタール以上の農地を同一の目的のために転用する場合では農林水産大臣の許可が必要になります。許可は、農業委員会を経由して許可を求めて得ます。 農地転用の場合、相続した農地の性質によって少しずつ手続が異なるため、その農地がどのような農地であるのか把握することが最初に行うことになります。農振法と農用地からの適用除外 都道府県知事は、「農業振興地域の整備に関する法律(農振法)」に基づき、農業の振興を図ることが相当であると認める区域を農業振興地域に指定します。指定地域に存在する市町村は、その農業振興地域内で、農用地等として利用すべき土地の区域(「農用地区域」)とその区域内にある土地の農業上の用途区分等を定めます。 農業振興地域内農用地区域内の農地(「農振農用地」又は「青地」と呼ばれます)は、相当の期間にわたって農業利用すべき土地として指定されているため、相続した農地がこの農振農用地である場合、農地転用は原則として認められません。 農振農用地の転用を試みる場合、農用地からの除外(農振除外)を当地の市町村の農政課等に申請し、農振除外を経たうえで知事等に農地転用の許可を求めます。農振農用地以外の農地の転用 農業振興地域内農用地区域外の農地(農業振興地域内に存在する農振農用地以外の農地も含む)は、「青地」に対して「白地」と呼ばれます。「白地」は、さらに甲種農地、(乙種)第1種農地、(乙種)第2種農地、及び(乙種)第3種農地に分類されます。表.白地農地の分類甲種農地(乙種)第1種農地(乙種)第2種農地(乙種)第3種農地特徴市街化調整区域内の土地改良事業等の実施後8年以内の農地や特に良好な営農条件を備えている農地10 ha以上の規模の集団農地、土地改良事業等の対象となった農地や良好な営農条件を備えている農地市街地化が見込まれる区域内に存在する10 ha未満の農地又は生産性が低い農地市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地農地転用の可否原則転用不可原則転用不可第3種農地に代替となる土地が存在する場合には転用不可原則転用許可 ただし、転用とする農地が市街化区域にある場合では農業委員会に転用の届出をします(農地法第4条及び農地法施行令第3条)。土地改良区からの除外申請 土地改良区とは、農地の有効利用のために農地の整備や農業用水路の工事等を行う団体のことをいいます。「土地改良法」に基づき都道府県知事が認可して設立された土地改良区には対象となる土地と組合員が所属することになります。自分の土地が土地改良事業の対象になっていると農地転用は許可されないため、農地転用を考えている人は自分の農地を土地改良区から除外してもらえるように土地改良区に申請しなくてはなりません。 土地改良区は、借入金と組合員の賦課金で運営されているため、土地改良区からの除外を求める者は地区除外決済金を支払う必要があります。農地を貸す・売る場合 農地を他の農業者に貸し出す(貸借権を設定する)場合や農地を売却する(所有権を移転する)場合には、その農地の所在地の農業委員会の許可が必要になります。農業委員会の許可を得ずに貸借権を設定したり所有権を移転したりしてもその貸借権設定や所有権移転は無効であり、その土地の登記はできません。農地バンク 農地の貸借は、市町村が作成する「農用地利用集積計画」に基づいて行われています。農業委員会の許可を受けた農地の貸借権設定に加え、令和7年4月からは農地バンクを介して農地の貸借を行うことができるようになります。 農地バンクとは、「農地中間管理事業の推進に関する法律」に規定される「農地中間管理機構」のことをいいます。農地バンクも「農用地利用配分計画」を策定していましたが、市町村の「農用地利用集積計画」と一本化して農地バンクが「農用地利用集積等促進計画」を策定することになりました。 それまでの農地の貸借では農地の貸し手と借り手が直接交渉を行う必要がありましたが、令和7年4月からは農地バンクが「農業経営基盤強化促進法」に基づいて貸借契約を媒介することになります。農地バンクが介在することで次のようなメリットが得られるとされています。 貸し手のメリット賃料は、農地バンクから振り込まれる(借り手からの賃料振込について心配しなくてよい)貸した農地は、貸付期間満了後に必ず返却される農地バンクに貸し付けた農地について、税制優遇措置が受けられる 借り手のメリットまとまった農地を長期間、安定的に借り受けられる複数の所有者から農地を借りる場合であっても診療支払いや契約事務について農地バンクが契約を一本にまとめてくれる貸し手の相続時の対応は、農地バンクが行ってくれる 地域のメリット機構集積協力金が支払われる農家負担ゼロという条件の整備が受けられる さらに、農地の所有者が農地バンクを通じて農地を売却すると、譲渡所得の特別控除等を受けることができます。まとめ 農地を相続により取得した者(包括遺贈による取得者を含む)は、その農地が所在する市町村の農業委員会に届け出る。 農地を特定遺贈により取得した者は、その農地が所在する市町村の農業委員会に対して農地の所有権移転の許可を求める。 取得した農地の転用を求める者は、その農地が所在する市町村の農業委員会を介してその農地が所在する都道府県の知事に農地転用の許可を求める。 取得した農地について貸借権の設定又は所有権の移転を求める者は、その農地が所在する市町村の農業委員会に貸借又は売却の許可を求める。 農地バンクの利用は、取得した農地の貸借又は売却に関してメリットを有する。 農業委員会や役所の林業担当課への届出書等の作成は行政書士の業務です。農地や森林を相続することになり/なりそうで困っている方は、行政書士にご相談ください。
    Read More
  • 相続登記義務化と相続土地国庫帰属制度
    相続登記義務化と相続土地国庫帰属制度 相続・遺贈により取得した不動産については、2024年(令和6年)4月1日から登記(相続登記)が義務化されることになりました。本記事では不動産の相続登記義務と相続土地国庫帰属制度について説明します。不動産相続登記義務制度とは これまで、相続で不動産を受け継いでも登記が義務ではなかったため、所有者が不明だったり、未登記の状態が何代にもわたって権利関係が複雑になってしまった不動産が増えてしまいました。真の所有者が誰であるのか行政の方でたどりつけないため、地震などの災害時に被災家屋の撤去の妨げともなっています。そこで、政府は令和6年4月より、相続した不動産の登記を義務化しました。制度の内容 不動産を取得した相続人・受遺者は、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務になりました。正当な理由もなくその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処されます。 被相続人が遺言をしていれば、その内容を知った日、遺言をしていなければ被相続人の死亡を知った日が「取得を知った日」になります。被相続人が遺言をしていなかった場合、その遺産は被相続人の死亡時に相続人全員の共有となります。「取得を知った日」は、特定の相続人に特定の不動産が分割されることが決定した日ではないことに注意してください。相続登記の期限が来てしまった場合 現在の法律では遺産分割協議に期限はありません。そのため、「取得を知った日」から3年の期限までに遺産分割協議がまとまっていない可能性を考慮し、3年の期限までに遺産分割協がまとまりそうにない場合は3年の期限のうちに「相続人申告登記」をして不動産の名義人の相続人であることを登記する制度ができました。この相続人申告登記制度では、相続人申告登記を行った相続人はその不動産の所有者であることを登記したわけではないため、後に遺産分割協議がまとまって不動産を取得した相続人に3年以内の登記が義務付けられています。 相続登記義務化は令和6年4月1日以前に発生していた相続にも適用されます。相続登記の相談は、司法書士が対応します。住宅用地の課税標準の特例と空き家 住宅用地についてはその土地に居住する人の税負担を軽減する主旨で、その課税標準となる額を固定資産課税台帳に登録されている価格の6分の1又は3分の1とする住宅用地に対する課税標準の特例が適用されてきました。 しかしながら、家屋が土地の上にあったほうが固定資産税が安くなるため、親が亡くなった後の故郷の実家を空き家として放置する事例が増えてきました。そのような放置された家屋は、周囲の住環境を悪化させる原因となり、周囲の土地の資産価値を毀損し、相続した不動産の売却を困難なものにします。このような事態を防ぐため、一年以上にわたって人の出入りが無い空き家を市区町村長が特定空家として指定できるようになりました。 特定空家として指定されるとその空家が存在する住宅用地の課税標準の特例措置が無くなります。さらに、令和5年(2023年)の法改正により、市区町村長から勧告を受けた管理不全空家についても住宅用地の課税標準の特例措置が無くなることになりました。このようにして、空き家のままにしておいたほうが得である状態が終わり、固定資産税額が増加することになります。 受け継いだ土地を利用する予定もなく、ただ固定資産税を払い続けるのも嫌だという人は相続土地国庫帰属制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。「空き家」と「空家」の間に違いはあるの?行政上、「空き家」と「空家」の間には区別が設けられています。家から居住者がいなくなってしまった時点でその家は「空き家」になり、さらに「空き家」に必要な維持管理がなされていなかったり、一年以上の人の出入りがなかったりすると「空き家」が「空家」になります。被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの税制上の特例 相続又は遺贈により取得した被相続人の居住用の家屋又は敷地を売って、一定の要件にあてはまるときは、その譲渡所得から最高3,000万円を控除することができます。ただし、その被相続人の居住用不動産を相続した相続人の数が3人以上になる場合では、控除額は2,000万円までになります。相続土地国庫帰属制度 都会に生活基盤があるにもかかわらず、相続によって田舎の実家の土地を取得したが、その土地を利用することも無く、放置しているという所有者が増えてきています。そのような管理されていない土地の増加を抑制するため、国は、相続又は遺贈(相続等)により土地を取得した相続人が土地を手放して国庫に帰属させることを可能にする相続土地国庫帰属制度を創設しました。 しかしながら、土地管理コストの国への転嫁やモラルハザードが発生しないように帰属できる土地には以下のような要件があります。相続土地国庫帰属の申請をすることができないケース建物がある土地抵当権や使用収益権が設定されている土地他人の利用が予定されている土地土壌汚染がある土地境界が不明確であったり、所有権について争いがある土地相続土地国庫帰属の承認を受けることができないケース一定の勾配・高さの崖があって管理に過分な費用・労力がかかる土地土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地土地の管理・処分のために除去しなければならない有体物が地下にある土地隣接する土地の所有者等の争訟によらなければ管理・処分ができない土地その他、通常の管理・処分にあたって過分な費用・労力がかかる土地相談先:対象の土地が所在する都道府県の法務局又は自宅から近くの法務局申請先:対象の土地が所在する都道府県の法務局申請後の流れ: 申請 法務大臣(法務局)による実地調査を含む要件審査 承認又は不承認の決定審査料:土地一筆当たり14,000円※申請が承認された場合、申請者はその土地の管理に要する10年分の費用に相当する負担金を納付します。一筆の土地が複数の者により共有されている場合、共有者全員が共同して申請することで本制度を活用することができます。本制度は、相続・遺贈により土地を所有することになった者を対象としていますが、一筆の土地の一部の持ち分を相続等以外の原因により所有することになった者も、相続等により他の持ち分を有することとなった者と共同して申請することで本制度を活用することができます。申請書:申請書の書式は法務省のホームページ(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html#mokuji7)から得ることができます。添付書類: 承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面 承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真 承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真 申請者の印鑑証明書 遺贈により土地を取得した場合、遺言書等の遺贈を受けたことを証する書面 承認申請者と所有権登記名義人が異なる場合、土地の所有権登記名義人(又は表題部所有者)から相続又は一般承継があったことを証する書面※書類1~4は全ての場合で必要であり、書類5と6は該当する場合に必要です。他に、固定資産評価証明書、承認申請に係る土地の境界等に関する資料を任意で添付することができます。 申請は相続土地国庫帰属制度の利用を希望する人が行うことになていますが、申請書等の作成は弁護士、司法書士、及び行政書士が代行可能です。行政書士に相談する
    Read More